Designated Producers

2015年度神戸肉枝肉共励会・名誉賞
[太田畜産] 太田 克典さん

若い世代が夢を持てる牧場経営を
但馬牛の本場・兵庫県養父市の自然豊かな山の上に、9棟の牛舎を保有する太田畜産。毎月50頭もの但馬牛を出荷するという、県内有数の生産力がここの特徴。太田克典さんが18歳で家業を手伝い始めた時には、100頭規模だったとは信じられないほどです。毎年着実に肥育頭数を増やしてきたのに加え、この2〜3年は繁殖にも力を入れています。ここ5年、和牛の人気が高まり需要は増えるものの、子牛の供給頭数は減少し、子牛の値段は高騰しています。その現状に対応するため、繁殖用雌牛120頭と繁殖専門スタッフを迎え入れ、「繁殖、肥育、出荷」の一貫経営に舵を切っています。
「牛飼いで儲かって、生活が豊かになって、それで頭数増やしてまたがんばれる、といういい循環にならんと、若いもんにやれとは言えんわな」と太田さん。若い世代が夢を持てる牧場経営を、という志が見えます。
牛飼いは背中を見て覚えて身につくもの
ここで働く9人のスタッフのうち、最年少は息子の海星さん(17歳)。父の背中を追って、牛飼い人生を歩み始めました。
「小さい頃から手伝っとったし、牛が好きだったから。都会に出てサラリーマンをするとか、想像したことは1回もないです」。
自社牧場の仕事と並行して、削蹄(さくてい:牛の伸びた蹄を切ること)の仕事で、県内外の牧場を訪問したりもしている海星さん。かつては父である太田さんも、そうやってさまざまな牧場の肥育技術を見て回ることで、牛飼いとしての目や腕を磨きました。海星さんに削蹄師のグループに入ることを薦めたのも、「牛飼いは言葉で教わるものじゃない、背中を見て覚えるもの」という信条があるから。
「この仕事を続けていく上で必要な資質は?」という質問を太田さんに投げかけると、「結局、“感性”がないとあかんやろな。それは言葉で説明できるもんじゃない、自分で感じる力としかいいようがない」という答えが返ってきました。
次世代に受け継がれる、牛飼いの誇り
現在太田畜産では、スタッフが交代で昼夜問わず牛に目を配り、わずかな不調のサインにも迅速に対応できる体制に。若手も経験を積めば管理責任者として牛舎を任されるようになります。
「但馬牛は県外産の牛と比べて繊細なので、病気をこじらせるのが一番怖い。社長はあまり口出ししないで任せてくれるけど、たまに小さな見落としを指摘されることもあって、まだなかなか完璧にはいかないです」。そう話すのはここで働いて7年になる太田貴士さん(30歳)。社長の牛飼いの腕ももちろんのこと、ここまで牧場の規模を大きくしてきた気骨を尊敬しているとか。
海星さんに今後の夢を聞くと「20歳になる頃には自分の牛を持って育ててみたい。出産から立ち会って、出荷まで全部自分の手で」という答え。いつか共励会で父子が名誉賞を競い合う日も、そう遠くないかもしれません。

太田畜産では10代から40代まで、9名のスタッフが日勤と夜勤の二交代制で牛たちを見守ります。

「生まれた時から牛がそばにいて自然と牛の世話を覚えた」という海星さん。